医師になった理由


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医師になった理由


『洗脳』
 私の父は なにわの商人です。昭和11年生まれで、当時は高校・大 学と進学する人は少数でした。父は 中学校の先生に進学を勧められ、 医師を志したことがあったのですが、祖父が興した商売が軌道に乗った ため その跡を継ぎました。しかし 夢をあきらめたことを後悔し、自分 の息子(私)に託しました。
 そんな父に育てられた私は、まんまと洗脳され、医師の道にいざなわ れたのでした。
小学生の頃、春・夏・冬休みは 朝早く起き、仕入れについて行きまし た。道すがらクイズ形式で色んな事を教わりました。世の中の仕組み、 人の感情の動向。知らず知らずのうちに 私は医師を志していました。“医者の仕事は病気を治すこと だけではなく、病人に安らぎを与えること。”そんなことを教えられたような気がします。


『鮮烈な印象』
 高校生の頃、帰宅途中に交差点で中年女性がいきなり倒れました。いわゆる心肺停止状態でした。 周りにいた人は悲鳴をあげたり、何もできずに右往左往していました。そこに30代と思われるスーツを着た 男性が現れ、道路にひざまずき状況を一瞬で把握し、何の躊躇もなく、倒れた女性の鼻をつまみ、顎を 上げて人工呼吸・心臓マッサージを始めました。数分後に救急車が到着しましたが、そのころには女性の 意識は戻っていました。おそらくその男性は医師だったと思いますが、その行動に感動したことを今でも鮮 烈に覚えています。こんな医師になりたいと強く思いました。

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